
第19回CTサミット
No. 01
64列CTから320列CT装置 Aquilion ONE導入による右副腎静脈に対する撮影タイミングについて
金城 一史(社会医療法人友愛会 豊見城中央病院 放射線科)
【共同演者】
新田 宗之(社会医療法人友愛会 豊見城中央病院 放射線科)
●抄録本文
【目的】
当院では右副腎静脈3D-CTの撮影で肝静脈を含むIVCから腎を含めた撮影範囲で腹部大動脈にROIを設定したボーラストラッキング法による腎動脈相と右副腎静脈相の撮影がある。Aquilion ONE/vision Editionの導入に伴い撮影条件を改めることとなった。
【方法】
SIEMENS64列CT装置にて副腎静脈を目的に撮影された88症例を振り返り、ボーラストラッキング法による右腎動脈と右腎静脈から合流する下大静脈血管内の造影剤到達時間とCT値を測定することとした。上記結果より320列CT装置では管電圧を120kVから100kVに変更し可能な限り600mgI/kgの28秒注入固定による23症例を右副腎静脈の視覚的3段階評価と腎動脈CT値の関係を比較した。
【結果】
64列CT(n=88)造影剤注入条件はまばらであり、体重比用量646±39.4(mgI/kg)、注入固定時間28±2.9(秒)、23±2.9(mgI/kg/秒)であった。解剖学的にも腎動脈上昇は直接IVCのCT値上昇すると考え、腎動脈と右副腎静脈レベルIVCのCT値を比較すると回帰直線y=1.1889x+143.25 R2=0.3191(r=0.565、p<0.0001、CI95%:0.403-0.692)の相関関係を認めた。64列ではHelical scanであり、腎動脈相から副腎相までの移り変わりのIntervalは14±4.8(秒)、肝静脈を含むIVCから腎を含めた撮影範囲のScantimeは8±4(秒)であった。320列CTのVolume scan(16cm)、1.5秒 Scanでは腎動脈相から副腎相へのIntervalを22秒付近と設定した。右副腎静脈の3段階の視覚的描出と右腎動脈CT値の結果はpoor:64列CT(n=25/88、285±64HU)、good:64列CT(n=37/88、357±59HU)、Excellent:64列CT(n=26/88、373±55HU)、Excellent:320列CT(n=22/23、429±69HU)と改善された。
【考察・結語】
右副腎静脈の描出には腎動脈CT値の上昇が必要で装置変更後の100kV、600mgI/kgの選択でも良好な右副腎静脈の3D画像を提供することができている。
No. 02
吸収体を使用したDual Energy Scanによる画質特性の基礎的検討
藤本 一真(宮崎県立延岡病院)
【共同演者】
蕪 俊二 / 酒匂 剛志 / 緒方 正德(宮崎県立延岡病院)
●抄録本文
【背景・目的】
Dual Energy CTは高い精度でビームハードニング補正を行うことにより,CT値精度やアーチファクト低減に大きく関与するといわれ,頭部CT検査の診断能向上が期待されると報告されている。
そこで,ビームハードニング現象を発生させるため,周囲に吸収体を巻いたファントムを作成した。Dual Energy CTで得られた画像は,吸収体使用時に視覚的違和感を認めた。本研究の目的は,吸収体の影響による画質評価を行い,Dual Energy CTが持つ特異性を検討したので報告する。
【使用機器】
・Discovery CT750 HD GE社
・CTmeasure 日本CT技術学会
【方法】
ファントム周囲に厚さの異なる吸収体を巻き,Dual Energy Scanにより,吸収体なし,吸収体厚5mm,吸収体厚11mmの画像を得た。得られた画像から,MTF・NPSを算出した。
吸収体使用時の画質変化を以下の項目で検討した。
・再構成関数の違いによる評価
・エネルギーレベルの違いによる評価
・撮影線量の違いによる評価
【結果】
吸収体使用時にMTFが低下し,再構成関数およびエネルギーレベルを変更した場合でも同様の結果となった。NPSは高周波領域で低下した。撮影線量を低減した場合,吸収体なしと吸収体5㎜のMTFがほぼ一致した。NPSは吸収体5㎜の時すべての周波数領域で上昇した。
【考察】
吸収体使用時,NPSの測定でみられた高周波領域のノイズ低減効果によりエッジ成分の保持が困難となりMTFが低下したと考えられる。このノイズ低減効果による画像上の高周波フィルタリングが視覚的な違和感を認めたといえる。吸収体使用による解像度低下は再構成関数およびエネルギーレベルの変更による改善は得られないが,撮影線量を低減した場合,吸収体5mm使用時に解像度の低下が改善することが示された。このことは,吸収体使用時の高周波フィルタリングが抑制されたことを示すが,低線量撮影による低コントラスト領域への影響が懸念される。
【臨床的意義】
本研究からDual Energy CTで得られた画像は,吸収体に囲まれた領域について高周波フィルタリングがかかることを示した。頭部領域について,頭蓋骨といった吸収体の影響から解像度の低下が考えられる。低線量撮影による解像度低下の改善が考えられるが,脳実質といった低コントラスト領域への影響を考慮しなければならない。
No. 03
RaySUMの特性を探る
西尾康孝(大浜第一病院 画像センター)
●抄録本文
【背景】
WorkStation(WS)の発展に伴い、多くの処理画像が臨床で使用されている。VRやMIPは利用価値の高い処理画像の代表である。これらの多くは、元画像との画質比較を行い、その特性が明らかになっている。しかし、一般撮影様の画像が得られるRaySUMに関しては、画質評価の報告が少ない。救急撮影等で、一般撮影の代替として利用している施設もあり、その特性を評価する必要性を感じる。
【目的】
RaySUMの特性を知りその利用方法を探る
【方法】
(1) 6種再構成関数のMTFおよびNPSの計測を行う。自作ファントムを撮影し、RaySUMおよびMIPにてプロファイルカーブを作成する。(2) 2種の再構成関数(腹部、骨)でRaySUMを作成する。元画像に画像処理(eddg強調等)を加えRaySUMを作成する。これらを、Scheffeの一対比較法(中屋変法)にて評価する。
【使用機器】
CT装置:SIEMENS:SOMATOM Definition AS+ 、WS:TERARECON,INC Aquarius Net Station Ver1.5、自作phantom
【結果】
低分解能の再構成関数では、RaySUM・MIPともに形状を表現することが困難であった。しかし、高分解能の再構成関数では、ともに形状を表現できていた。RaySUM・MIPともに同様の傾向を示したが、高分解能の再構成関数において、アンダーシュートの影響を受ける傾向があった。MIP同様、RaySUMもノイズの影響を受けにくい画像処理であることが分った。画像評価において、骨用再構成関数で作成したRaySUMは一般撮影と同等の評価を得た。RaySUMを作成する際は、使用画像範囲を限定することによって、一般撮影よりも有意に良い画像評価を得ることができた。
【考察】
低分解能の再構成関数に比べ、高分解能の再構成関数を用いると一般撮影様の画質を得られる。しかし、アンダーシュートの影響を強く受ける傾向があるため、注意が必要である。一般撮影では描出しにくい部位(下位頚椎や歯突起)が優位に描出されるため、救急等の撮影では有用であると考える。
【結語】
RaySUMはノイズの影響を受けにくい画像処理である。整形外科領域で使用するためには、高分解能の再構成関数を使用し、目的部位に絞った画像範囲で作成することが望ましい。
No. 04
胸部-下肢CT angiographyにおけるダブルレベルテストインジェクション法の有用性について
鍵本 剛史(県立広島病院 放射線診断科)
【共同演者】
高橋 正司 / 稲田 智 / 寄高 千聖(県立広島病院 放射線診断科)
●抄録本文
【背景・目的】
胸部を含めた下肢CT angiography(以下,胸部-下肢CTA)は撮影範囲が広く,患者個々の血流速度の違いにより,適切な造影タイミングで撮影を行うことが困難である.今回,われわれは,胸部-下肢CTAにおいて,1回のテストインジェクションで2ヶ所のモニタリングを行い,本スキャンの撮影開始時間及び撮影時間を決定するダブルレベルテストインジェクション法(以下,DL-TI法)の有用性について検討したので報告する。
【使用機器】
Light speed VCT (GE healthcare,64列MDCT), Dual shot GX (根本杏林堂,造影剤自動注入器),Synapse VINCENT ver。4.1 (FUJIFILM, 画像処理装置)
【方法】
対象は,当院で施行した胸部-下肢CTA20症例とした.造影法は,フラクショナルドーズ:18mgI/kg/sとし,注入時間をDL-TI法:3秒,本スキャン:25秒とした.また,いずれにおいても造影剤注入後,生理食塩水20 mLによる後押しを行った。
DL-TI法は,左心房と膝窩動脈において連続的にモニタリングスキャンを行い,造影剤の左心房到達時間(TLA,arrive)および膝窩動脈ピーク時間(TPop,peak)を測定した。本スキャンは,撮影開始時間:(TLA,arrive+20)秒とし,撮影時間:(TPop,peak-TLA,arrive-3)秒となるようにピッチファクタおよびローテーションタイムを調節した。
造影効果の評価は,各部位の動脈内CT値を測定した.また,下肢静脈描出の有無についても検討した。
【結果】
各部位の平均動脈CT値は,上行大動脈:430±74 HU、腹部大動脈:407±69 HU,総腸骨動脈:419±68 HU,浅大腿動脈:447±70 HU,前(後)脛骨動脈:396±71 HUであった.また,3例で下肢静脈の描出を認めた。
【結語】
胸部-下肢CTAにおいてDL-TI法により,良好な造影効果を得ることができ有用であった。
No. 05
頭部CTAにおける造影効果不良症例のCT値とVR像の検討
白石 芳樹(長野厚生連篠ノ井総合病院 診療放射線科)
【共同演者】
岸田 学 / 井出 新吾(長野厚生連篠ノ井総合病院 診療放射線科)
●抄録本文
【目的】
当院での頭部CTAの主な目的は脳動脈瘤の精査である。脳動脈瘤の検索にはVR像が有用であることには疑いの余地はない。脳動脈瘤を良好にVR像で描出するためには300HU程度のCT値が必要となるが、患者の心機能・タイミング不良などの要因で時にはVR像を作成するためにはpoorな画像を撮影してしまうことがある。そうした場合の対処法を、当院に新しく導入されたDualEnergyを使ってCT値・SD値・VR像について考察した。
【使用機器】
SOMATOM Definition Flash(SIEMENS)・SYNAPSE VINCENT(Fuji)
【撮影条件】
当院での頭部CTAのルーチン検査はサブトラ用のマスク像を撮影した後、中大脳動脈起始部の目標CT値を350HU程度に設定し、中濃度造影剤(イオパミドール300)を18mgI/s/kgで14s注入。頚部の内頚動脈でボーラストラッキングをかけて250HUに達した時間最小ディレイ(2s)でスタートしている。撮影条件は、マスク像100kV・100mA・ピッチ0.8・CTDI9.65、本スキャン80kV280mA・140kV140mA・ピッチ0.6・CTDI24.43である。
【方法】
通常使用している120kV相当の画像と、SIEMENSの逐次近似法であるSAFIREの強度(2・3)を変化(通常1で使用)、80kVのみ、DEコンポジションを変化させたもの(0.9・1)、仮想単色X線の40keV・50keV・60keVについて、MCA起始部のCT値・被殻部のSD値・VR像をそれぞれ検討・比較した。
【結果】
120kV SAFIRE1との比較を後に表す。逐次近似の強度を変化させたものについてはCT値の変化はほぼなくSDのみ低下するという結果になり、VR像で比較してもSD低下の効果はほとんど見られなかった。80kVのデータのみを使ったものはCT値は上昇するがノイズが多くVR像は劣化した。DEコンポジションを変化させたものは80kVのデータのみを使用したものよりはSDの劣化は少なくVR像も良好なものが得られた。仮想単色X線を使用したものはCT値の上昇が見られ、ノイズも40keV以外はそれほど目立たなかったが、40keV・50keVに関しては骨のCT値の変化量が大きすぎるためか頭蓋底のサブトラクションがうまくいかなかった。
No. 06
Ring ROI法を用いた不均一CT値領域の新しい体積算出法の提案
伊藤 雄也(藤田保健衛生大学大学院)
【共同演者】
鹿山 清太郎 / 山際 寿彦(藤田保健衛生大学大学院)/
丹羽 正厳(市立四日市病院 医療技術部放射線室) /
富田 羊一(名鉄病院 放射線科)/ 土井 裕次郎(藤田保健衛生大学病院 放射線部)/
辻岡 勝美(藤田保健衛生大学 医療科学部)
●抄録本文
【目的】
近年、CTにおける体積測定は様々な部位で臨床応用されており、臨床的意義が大きい。現在、CTにおける体積測定ではしきい値が用いられているが、測定する物体の周囲に複数のCT値を持つ物質が存在した場合、体積算出が正しく行えないという問題があった。今回我々はリング状のROIを設定し、その平均CT値を周囲物質のCT値とする手法を考案した。また、体積算出には我々の開発したしきい値を用いない手法についても検討を行った。
【方法】
体積測定の対象として高さ2 mm、直径4.85 mmの円柱型のハイドロキシアパタイトを用いた。ハイドロキシアパタイトの周囲をCT値が異なるように希釈造影剤で調整した2種類の寒天A・Bで固定した。ハイドロキシアパタイトの周囲の寒天Aに対する寒天Bの比率は0%、25%、50%、75%、100%と変化させた。寒天A・BのそれぞれについてCT値の半値を用いて体積計算を行った。また、ハイドロキシアパタイトの周囲にリング状のROIを設定し、その平均値を周囲物質のCT値として体積計算を行った。しきい値を用いない新しい手法についても、同様の評価を行った。
【結果】
しきい値法では設定するしきい値によって算出される体積が変動した。また、周囲に複数のCT値を持つ素材が存在した場合、その存在する割合によって算出される体積も変化した。体積測定の誤差は、寒天Aでしきい値を設定した場合が-15%、寒天Bでしきい値を設定した場合が+40%となった。リング状のROIを用いて、しきい値を用いない新しい手法を利用した場合、体積計算の誤差は±5%以内となった。
【結語】
我々が開発したしきい値を用いない体積測定法では周囲の物質が不均一な場合、正確な体積測定が行えなかったが、リング状のROIを設定し、周囲臓器の平均CT値を用いることによって、正確な体積測定ができることがわかった。
No. 07
小児心臓CT撮影のプロトコル構築のための検討
福地 博行(東千葉メディカルセンター)
【共同演者】
梁川 範幸 / 越智 茂博 / 坂井 上之 / 嶋川 友里絵(東千葉メディカルセンター)
●抄録本文
【背景・目的】
管球回転速度0。275s/rotの320列検出器CT(Aquilion ONE ViSION EDITION)が導入され,心臓CT検査における高心拍時の冠動脈描出が良好になり、小児心臓CT検査への応用も期待される。
小児は呼吸抑制が不可能であり,高心拍であっても複数心拍からの心電同期画像再構成は適切ではない。今回,小児心臓CTのプロトコルの構築を目的として,Half再構成での撮影を前提とし,ファントムを作成して管球回転速度と画像再構成法の検討を行った。
【方法】
心電同期再構成画像の位置依存性,管球回転速度の違い,再構成法の違いによる画質の低下について確認した。
心臓動態ファントムに模擬血管(CT値300HU,3㎜Φ)を装着し,推奨条件(Heart Navi)と0。275s/rot (Half再構成)で撮影した。そのファントムの模擬血管CT値及びアーチファクトについて検討した。
【結果】
オフセンターになるほどMTFは低下した。
管球回転速度によるMTFの変化はほぼなかった。
Half再構成とSegment再構成はMTFおよびNPSに差が見られた。
模擬血管のCT値は心拍数が高くなるほど低い値となった。
モーションアーチファクトは心拍数が高くなるほど多くなった。
【考察】
Segment再構成は時間分解能を優先したデータ収集のためNPSは向上したと考える。
適切な再構成法により血管CT値は担保されるが,高心拍(130bpm以上)になるとCT値が低下する。
Half再構成は高心拍ほどアーチファクトが増加し,ファントムの体積に対し約5~15%程度のアーチファクトが発生する。
【結語】
高心拍では適切な管球回転速度と再構成法を選択することは重要である。
小児心臓CT検査において最短管球回転速度と1心拍Half再構成を用いる場合,モーションアーチファクトおよび血管CT値の低下を考慮した評価が必要である。
小児の年齢や必要な臨床情報を考慮し撮影方法を工夫しなければならない。
No. 08
"肺血栓塞栓症に対するCTラングサブトラクション法:カラーマップおよび核医学類似画像の視覚評価"
小柳 正道(杏林大学医学部付属病院 放射線部)
【共同演者】
苅安 俊哉(杏林大学医学部 放射線医学教室)/
高橋 沙奈江 / 宮崎 功(杏林大学医学部付属病院 放射線部) /
壷井 美香(東芝メディカルシステムズ株式会社) /
横山 健一 / 似鳥 俊明(杏林大学医学部 放射線医学教室)
●抄録本文
【背景】
Aquilion ONE ViSION Edition Ver 6.0(東芝メディカルシステムズ株式会社)にはラングサブトラクションというアプリケーションソフトがあり、造影・非造影のボリュームデータを位置合わせ、差分することにより造影された領域のみを描出することでsingle energy(kvp)のみで肺灌流画像(カラーマップ)を作成することができる。
【目的】
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension ;CTEPH)に対する肺動脈バルーン拡張術(balloon pulmonary angioplasty ;BPA)施行前に精査目的で検査されたCTデータからラングサブトラクション法を用いたカラーマップを作成。区域性血流分布欠損の診断が可能であるかを検討した。また、本法で得られたデータから作成した核医学類似画像についても視覚評価を行った。
【方法】
当院で2014年8月〜2015年3月の間にラングサブトラクションを施行した患者のうち、急性期肺塞栓疑いでCT検査を施行したが異常所見のなかった正常例20例と右心カテーテル検査が施行されCTEPHとの診断がついている20例の計40症例のカラ-マップを用い、臨床情報を参照せずに症例毎の区域性血流分布欠損の有無を判定した。核医学類似画像については 後処理による診断能の違いを検討した。
【結果】
CTEPH20症例中19例で血流欠損の診断が可能であった。右心機能が大幅に低下し十分な造影効果が得られなかった1例で診断が不可能であった。一方、正常20症例においてfalse positiveは見られなかった。また、 核医学類似画像の評価では、ラングサブトラクションすることで得られる元画像(SUB-LUNG)を後処理することで高い診断能が得られた。
【考察】
CTラングサブトラクション法はCTEPHにおける詳細な肺血流評価が可能で、病態の把握や治療方針決定において有用と考えられる。また、本法により得られたデータを用いた核医学類似画像にも臨床的な有用性が示唆された。
ただし、右心機能が低下した症例では、今回我々が用いた造影剤注入プロトコルでは十分な潅流画像が得られない可能性があり、さらなる改良が必要と考えられた。
No. 09
内臓脂肪評価目的による腹部CT法おける再構成フィルタ関数の影響
水井 雅人(鈴鹿回生病院 診療関連部 放射線課/放送大学大学院)
【共同演者】
溝口 裕司(鈴鹿回生病院 診療関連部 放射線課)/
田城 孝雄(放送大学大学院)
●抄録本文
【緒言】
国民の健康への関心は年々高まり、内臓脂肪への関心も注目されている。内臓脂肪評価法は腹囲計測法、X線CT法、超音波診断法などがある。腹囲測定法は簡便だが、内臓脂肪と皮下脂肪を分離して評価できない。一方、X線CT法は撮像条件に一定の基準はあるが、各施設が独自の撮像条件で施行している。画質を決定する撮像条件には管電圧・管電流・管球回転時間・フィルタ関数などがあり、今回我々はフィルタ関数が内臓脂肪などの評価に与える影響を検討した。
【方法】
臨床で臍周囲をヘリカルスキャンにて撮像した症例10症例をよりランダムに抽出した。これらをスライス厚3mmにて10種類のフィルタ関数にて再構成(BHCあり:FC1~FC5、BHCなし:FC11~FC15)して、それぞれの画像のノイズ・内臓脂肪・皮下脂肪・腹囲を測定した。撮像条件は管電圧120kVP、回転時間0.5secとし管電流はノイズレベルが8HUの設定で自動露出機構(Auto mA)を用いた。内臓脂肪及び皮下脂肪を解析する際、脂肪と認識する閾値は上限値-70HU、下限値-160HUとした。使用機器は、X線CT装置は東芝メディカルシステムズ社製 Aquilion64、内臓脂肪解析診断ソフト サイバネット社製 Slim Vision を用いた。
【結果・考察】
再構成フィルタ関数(BHCあり:FC1~FC5、BHCなし:FC11~FC15)をソフトからシャープに変化させるとノイズレベルは7.5HU→15.6HUまで変動を認めたが、内臓脂肪・皮下脂肪・腹囲径のいずれも解析値に変動を認めなかった。一般に脂肪を示すCT値はおおよそ-110HUを中心に正規分布する。この正規分布の割合がノイズ量となる。照射に用いるX線の光子量が同じ場合、ノイズ量に影響する要因はフィルタ関数となる。言い換えるならばフィルタ関数はX線光子量を変化させることなくノイズ量を減少させることが示唆される。本研究により、再構成フィルタ関数を工夫することで、ノイズ量を適正に制御すれば診療で用いる一般的な撮像条件より線量を低減して内臓脂肪評価目的による腹部CT検査を行える可能性が示唆された。
No. 10
X線CTにおける「らせん穴あきファントム」を用いたスライス厚測定
鹿山 清太郎(藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科 医用放射線科学領域)
【共同演者】
辻岡 勝美(藤田保健衛生大学 医療科学部)/
伊藤 雄也(藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科 医用放射線科学領域)/
丹羽 正厳(市立四日市病院) /
山際 寿彦(藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科 医用放射線科学領域)/
富田 羊一(名鉄病院)/
加藤 良一(藤田保健衛生大学 医療科学部)
●抄録本文
【目的】
X線CTのスライス厚測定では微小球体法や薄板法が推奨されている。これは、従来のアルミ板傾斜法やワイヤー傾斜法ではヘリカルスキャン時に正しいスライス厚測定が行えないことが原因である。しかし、微小球体法や薄板法ではヘリカルスキャンのFOV中心のみでのスライス厚測定、分割式心拍同期画像再構成では正しいスライス厚測定が行えないという問題がある。また、微小球体法や薄板法ではノンヘリカルスキャンのスライス厚測定が非常に煩雑になるという問題もあった。我々は微小球体法とアルミ板傾斜法やワイヤー傾斜法のそれぞれの利点を持つ「らせん穴あきファントム」を開発した。今回、「らせん穴あきファントム」でノンヘリカルスキャン・ヘリカルスキャンのスライス厚測定を行い、アーチファクト発生の程度、スライス厚測定の精度について検討を行った。
【方法】
我々の開発した「らせん穴あきファントム」は直径40mmのアクリル製円筒にらせん円周状に直径0.5mm、深さ5mmの穴があけられたものである。穴は1周90個で螺旋ピッチは5mmである。このファントムをスキャン後、描出された穴のCT値をプロットすることで体軸方向のスライス感度プロフィール(SSPz)を求めることができる。今回、ヘリカルスキャンとマルチスライスの体軸方向の端についてヘリカルアーチファクトやフェルドカンプアーチファクトの発生、スライス感度プロフィールの測定精度について検討を行った。
【結果】
アルミ板傾斜法やワイヤー傾斜法による測定ではヘリカルスキャン時にヘリカルアーチファクト、ノンヘリカルスキャン時にフェルドカンプアーチファクトが発生した。しかし、「らせん穴あきファントム」ではこれらのアーチファクトの発生は見られなかった。ファントムに開けられた穴は画像再構成関数によって描出が変化したが、得られたSSPzに変化はなかった。
【考察】
アルミ板傾斜法やワイヤー傾斜法でヘリカルアーチファクトやフェルドカンプアーチファクトが発生した原因は傾斜を持った投影データに対してファントム自体が傾斜を持っていることにあると考える。今回我々の開発した「らせん穴あきファントム」では傾斜構造がなく、測定原理は微小球体法や薄板法によるものである。本ファントムは傾斜系のファントムと微小球体ファントムの両方の利点を有するファントムと言える。
No. 11
線質硬化補正法の違いによる画像への影響
北岡 亮太(産業医科大学病院 放射線部)
【共同演者】
小川 正人 / 村上 誠一 / 渡邊 亮 / 永元 啓介(産業医科大学病院 放射線部)
●抄録本文
【背景および目的】
当院には同一社製の2機種のCT装置があり、それぞれ同じ撮影条件で検査が施行されている。しかし、頭部CTの画像においては、機種間での差異が生じる問題を認めた。これは、使用されている線質硬化補正法が異なっており、一方が従来の補正法で、他方が新しい補正法が用いられていることが原因であった。この問題を改善するためには、2つの補正法の特性や補正法の違いによる影響を把握する必要性がある。そこで本研究では補正法の基礎特性を把握するべく、2機種間のCT値を比較することで線質硬化補正法の違いによる画像へ影響について検討した。
【方法】
CT装置は東芝社製320列および80列を使用した。撮影条件は、管電圧120kV、画像SD=3.5程度になるように管電流時間積合わせて、頭部CT検査で使用するNon-Helical、Helical、Volumeの3つのスキャン方式を用いた。線質硬化を模擬するために水ファントム(φ20cm)に厚手のゴム(5㎜厚)を巻いて線質硬化ありとなしの状態を撮影し、頭部用の再構関数FC41(線質硬化補正なし)とFC21(線質硬化補正あり)の2種類にて画像再構成を行った。得られたAxial画像を標準測定法に準じた5点と辺縁4点の計9点のCT値を測定し、2装置間のCT値を比較した。
【結果】
線質硬化がある場合、いずれの補正法においてもNon-HelicalがHelical、Volumeに比べCT値が低く、2つの補正法のCT値差はNon-Helicalが大きくなった。いずれのスキャン方式においても320列の補正法に比べ80列の補正法ではCT値が低くなった。また、320列の補正法では線質硬化の有無でCT値に差はなかったが、80列の補正法ではCT値に差が見られた。
【結論】
線質硬化補正法の違いによりCT値の変動を認め、その差はスキャン方式に影響されることが判明した。臨床へ提供する画像は継時的な経過観察の観点からも装置間の差が無いことが望ましい。そのため、線質硬化補正法の特性や影響を踏まえた上で、画像表示条件の検討を行う必要がある。
No. 12
超高精細CTにおける腹部領域の微細画像診断への可能性
田口 詠子(国立開発法人研究センター 国立がん研究センター中央病院 放射線診断科)
【共同演者】
鈴木 雅裕 / 角田 勇人 / 田北 淳 / 長澤 宏文 /
麻生 智彦(国立開発法人研究センター 国立がん研究センター中央病院 放射線診断科)
●抄録本文
【背景】
当院における共同研究により開発した超高精細CTは0.25mmのディテクタサイズで0.12mmの空間分解能有する装置であり、「第71回日本放射線技術学会総会学術大会」にて物理特性・高コントラスト領域の有効性に関する報告がなされている。しかしながら開発当初より、期待されていた低コントラスト領域といわれる膵癌等、腹部領域の腫瘍に対する有効性評価、臨床評価はできていない。
【目的】
超高精細CT(東芝メディカルシステムズ社製)で得られる高精細画像における低コントラスト領域の視認性向上の度合いを評価し臨床応用に向けた有効性を検討する。
【方法】
膵がんの病態を模擬したファントムを作成し超拡大CT及び従来CTにて撮影を行った。得られた画像を5段階のスコアリング付けにて視認性評価を行った。評価は経験年数5年以上の診療放射線技師に5名で行った。
【結果・考察】
超高精細CTでは、従来CTと比較し低コントラスト領域において視認性が向上した。
現段階では、再構成関数や再構成方法(逐次近似応用再構成法)の最適化がなされていない為、今後改善されることによりさらなる向上が期待される。
また、今後臨床症例を重ねることにより腹部領域における微細な画像診断向上一助となると思われる。
【結語】
超高精細CTの高精細画像は低コントラスト領域の視認性が向上し、腹部領域における微細画像診断の有効性が示唆された。
No. 13
ADCTの新型検出器の性能評価
倉谷洋佑(市立四日市病院 医療技術部中央放射線室)
【共同演者】
高橋 康方 / 丹羽 正厳(市立四日市病院 医療技術部中央放射線室) /
吉田 亘孝 / 田中 孝 / 磯辺 好孝(JECO四日市羽津医療センター 放射線部)
●抄録本文
【目的】
東芝社製Aquilion ONE VISION Editionがこのたびバージョンアップし、新型の検出器(Pure Detector)が搭載された。この新型検出器では・東芝独自の精巧な極小切断(マイクロブレード)技術がしようされ、検出器素材の最適化がおこなれ、DAS実装密度の最大化により、得られる信号が40%増え、電気ノイズも28%低減される仕様となっている。今回、われわれは従来の検出器を有するAquilion ONEと新型検出器を有するAquilion ONE VISION Editionで基礎データを取得し、比較検討を行ったので報告する。
【方法】
Catpha700を撮影中心に設置した。管電流を10mAから550mAまで7段階に変化し、スライス厚は5mm、1mmで撮影を行った。Aquilion ONE、Aquilion ONE VISION Editionとも同様の条件にて撮影を行った。この時装置の表示CTDI・DLPが同一条件では同じであることを確認した。高コントラスト分解能についてはワイヤーのMTFを。低コントラスト分解能については水ファントム部のSD、NPS 、をそれぞれ求めた。
【結果】
高コントラスト分解能については50%MTFでは、新型検出器が0.35cycle/mmに対し従来の検出器では0.30cycle/mmであった。10%MTFでは新型検出器が0.55cycle/mmに対し従来の検出器では0.50cycle/mmであった。新型検出器を有するAquilion ONE VISION Editionのほうが、従来検出器のものよりもよくなった。 SDについては10%から30%の改善が見られた。NPSについても同様にすべての管電流で改善が見られた。
【考察】
新型検出器は従来の検出器よりも、加工精度が高く、検出部でのクロスオーバー光が低減されていることと、焦点サイズについての見直しがされ、新システムでは焦点サイズが小さくなっていることからMTFの向上が見られたと考える。SD、NPSについては、新型検出器は従来の検出器よりも電気ノイズが低減され、検出器素材の最適化がされたことで改善されたと考える。
【まとめ】
新旧の装置を比較することで、性能の違いを確認することができた。今後、測定したデータを臨床に活かしていきたい。
No. 14
小児心臓CTにおける位置決め撮影の被曝線量評価
松本 頼明(特定医療法人あかね会土谷総合病院 診療技術部放射線室)
【共同演者】
舛田 隆則 / 奥 貴行 / 山下 由香利 / 下川 由枝 / 今田 直幸
(特定医療法人あかね会土谷総合病院 診療技術部放射線室)
●抄録本文
【背景】
CTの被曝形態は特異的であり,CTDIvolおよびDLPのモニタ表示が義務づけられている。この線量指標により実際の被曝線量は推定可能となるが,位置決め撮影に限っては,管球固定下で撮影するためCTDIvolの概念がなく,被曝線量は不明である。
【目的】
本研究は,小児心臓CTにおける位置決め撮影の被曝線量を電離箱線量計により実測し,明らかにすることを目的とした。
【方法】
直径160 mmのアクリル製円筒型ファントム内に長さ100 mmのCT用電離箱線量計を挿入し,ファントム中央をisocenterに配置した。位置決め撮影は,小児心臓CT用のプロトコルで正面(P-A)および側面(L-R)をそれぞれ10回ずつ行った.また,本スキャン(心電図非同期撮影)時のプロトコルでも実測を10回行った。
【結果】
位置決め撮影の被曝線量は正面で36.88 ± 0.35 uGy,側面で47.36 ± 0.18 uGyであった。また,本スキャン時の被曝線量は1.37 ± 0.24 mGyであった。
【結語】
今回対象とした小児心臓CTにおける位置決め撮影の被曝線量は,本スキャンのわずか6 %であり,極めて少ないことが明らかとなった。位置決め画像取得後,被写体がoffcenterにある場合は,ポジショニングを改め,再度位置決め画像を取得することが望ましい。
No. 15
CBCT(コーンビームCT)における画像特性の基礎的検討
丹羽 正厳(市立四日市病院 医療技術部 放射線室)
【共同演者】
高橋 康方 / 倉谷 洋祐(市立四日市病院 医療技術部 放射線室)
●抄録本文
【目的】
近年の血管撮影装置にはフラットパネルディテクターが搭載され、コーンビームCT(以下CBCT)としての機能をもつシステムが普及している。現在当院で使用しているCBCTでは複数の撮影モードと再構成関数が選択可能である。今回我々は頭部領域の臨床使用利用を目的として、CBCTにおける撮影モード、再構成関数を変化させた場合の画像特性を把握するための検証を行ったのでここに報告する。
【方法】
撮影モード(70kVモード、109kVモード)、及び再構成関数(sharp、normal, smooth, very smooth)を変化させて空間分解能、ノイズ、および吸収線量について測定を行った。(1) 空間分解能:CatphanCTファントムをテーブル上に設置し、ワイヤー法にて面内MTFの計測を行った。ノイズ:撮影可能範囲がすべてカバーできる直径20cmの水ファントムを撮影し、Volume内のSDを計測した。吸収線量:頭部用CTDIファントム(16cmアクリル)を用いて面内中央部、及び周辺部の線量を測定した。
【結果】
空間分解能はsharp、normal, smooth, very smoothの順に空間周波数の高い領域の描出能が良い結果となった。SDの値はsharp、normal, smooth, very smoothの順に小さくなった。吸収線量はAnterior側が最も低く、Posterior側が最も高い値を示した。また、CTDIの値は当院で使用している頭部単純CTの線量と比較するとほぼ同等であった。
【考察】
骨領域や頭蓋内ステントなどの空間分解能を必要とする場合においては再構成関数sharpを使用することが望ましいと考える。面内のSDにおいてAntrior側が小さい値になったのは検出器に近いためではないかと考える。吸収線量においてAnterior側が低くPosterior側が高い値なったのは、X線管球が被写体のPosterior側を回り撮影するためであると考えられる。このことから頭部領域では水晶体の被ばく低減の効果が期待できる。今回Catphan CTファントムを使用することにより、CBCTの画像特性を把握するのに有用であることが示唆された。